vol.17 インドのナイアガラ Chitrakote Falls
このタクシードライバー、
歳は60代か、
真っ黒な肌に年齢以上の小じわが目立つ。
白髪の坊主頭で160cmもない小柄なおじいさんだ。
来ているものはうす汚れていて、
素足のまま外を歩く。
道中、何も言わず急に車を停めたかと思えば、
自分の紙タバコを買って運転しながら興じている。
出たゴミは窓から捨てる。
ポイ捨てに関してはインドでは茶飯事だが、
あまり心地よいドライブにはなりそうもない。
とばしてくれたおかげで50分もかからずに、
Chitrakote Fallsに着いた。
駐車料金なのかドライバーのおじいさんから
100ルピーくれと言われて渡すと、
ここで降りて歩いて行ってこいと言わんばかりに
滝のほうを指さした。
どうやら戻るまで車を停めて待っているつもりのようだ。
こっちもそのほうが良かった。
せっかく来たのだから気兼ねなくゆっくり眺めたい。
しかし、駐車場はただの原っぱで係員もいない。
100ルピーは本当に駐車料金なんだろうか?
滝は降りてから200mも歩くとすぐに現れた。
インドのナイアガラと言われるだけあって、
見ごたえがある。
視覚だけでなく、
大量の水が滝つぼに流れ落ちるその轟音が聴覚も刺激して、
僕はしばらく圧倒された。
鼓動が大きくなって胸が苦しい。
感動が僕の胸の容量を超えてしまっているのだ。
これほどの名所なのに人の姿はまばらだ。
北インドにあれば、
きっと有名な観光スポットとして、
国の内外を問わず見物客が集まるに違いない。
写真を数枚撮って川の水に触れ、ほとりに腰掛ける。
10分ほど経っただろうか。
だれかに肩をそっと叩かれる。
タクシードライバーのおじいさんだ。