神様がくれたインド旅

~ある夜突然、頭に浮かんだインドの地名“バスタール”  それだけを理由に訪れた初のバックパックの旅。これは、その一部始終をつづった旅日記です~

vol.23 Bastarの太陽

 早すぎる再会を果たした僕とおじいちゃんには、

妙な親近感が湧いていた。

 

タクシーへ乗るなり

「Let's go Bastar!」と言うと、

おじいちゃんはニコニコしながら、

ミュージアムへも行こう。」と返事をした。

 

英語とタミル語の会話だが、

もう言葉の壁は感じない。

会話は成立しているのだ。

 

遠いほうのBastar村へ先に行ってしまいたかったので、

「Bastar、ミュージアム、ホテル、OK?」と伝えると、

「OK!」とにっこり返事をして、

おじいちゃんはタクシーを出した。

 

5分後、タクシーはミュージアムに到着した。

言葉の壁が想像以上に厚かったこと、

そしておじいちゃんとは以心伝心の仲だと

思っていたのでショックだったが、

言われるままに車を降りて、

おじいちゃんに付いていく。

 

僕は博物館の類いには、あまり興味がない。

しかも知らない土地にある、

何の内容かもわからない、

何が書いているのかもわからない、

そんな博物館になど興味の持ちようがない。

 

入り口を抜け、最初の展示室に入るなり、

また僕の胸は詰まり、

大きく大きく息をのんだ。

 

その博物館は、

Bastarの歴史を展示するところだった。

昔のBastarの村人の暮らしぶり、

仕事、祭事やそれにちなんだ道具などが、

実物や写真を通して垣間見れた。

 

興味があるが、惹かれるわけではない。

まるで大人になってから、

本当の親だと知った人物に会うような、

そんな不思議な感覚でミュージアムを後にした。

 

午前中に見たあの渓谷のように、

予期せぬ出会いがここにもあった。

この旅の目的の終着駅はここなのか?

Bastar村にそれ以上の何かがあるのか?

そんなことを考えながら30分ほど走ったあと、

タクシーは急に道端に停まった。

 

スマホGPSはまだBastar村の

5kmほど手前を指している。

おじいちゃんは「Bastar」と言うので、

「違う違う、僕の行きたいのは、ほらこの先だよ。」

スマホを見せる。

それでも「とにかくここで降りろ。」と

言っているようだ。

 

そこは道端にポツンと建つ、

まだ新しい土産物屋だった。

僕の趣旨とはまったく異なる。

おじいちゃんのことはもう信頼しているので、

何か買わされることもないだろうと中へ入る。

 

4つに部屋が分かれた長屋のような店内には、

木製、土製、鉄製、高級品が部屋ごとに分かれて

陳列されている。

 

順番に見て回り何も買わずに車に戻る。

そう決めていた。

鉄製品の部屋を見ているときに、

ひとつの商品に目がとまる。

 

ずっと後ろをつけてきたらしい

店主が初めて喋った。

「ソル」と言っている。

きっと太陽のことだ。

確かにそんな形をしている。

「これはBastar村で作られたものですか?」と尋ねると、

「ここにある商品はすべてBastar製です。」と答えた。

 

ここでひとつ思い出した。

僕が最近決めた人生のテーマがある。

”Be the Light”、光になるという生き方だ。

大切な人、仲間、知人、出会うすべての人にとって、

光の存在になりたい。

「そのことを忘れるな」

そう言われているような気がして、

その太陽のペンダントトップをひとつ購入した。

 

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