vol.19 タクシーのおじいちゃんに身を委ねる
おじいちゃんと車に戻ると、
エンジンをかける前にBastar村の地図をスマホで見せた。
「ここに行きたい」と何とか伝えてみる。
伝わったのか、意外とすぐにOKっぽいジェスチャー。
よっしゃ!と心で叫ぶと、すぐにおじいちゃんが付け足した。
「5km」。
それはおかしい。
地図上ではどうやっても5kmで行ける距離ではない。
近道があるのか?
まあいい。
今は黙って従うしかない。
この状況に身を委ねてみよう。
タクシーは元来た道を走りだした。
Bastar村に向かっているかどうかの結果は
5kmを待たずに出た。
進行方向左側にあるはずのBastar村に対して、
車は右に曲がってずっと進んでいるのだ。
一気に心がざわつく。
車一台がやっと通れる田舎道をどんどん進んでいる。
日本のように気が生い茂った山道ではなく、
四方を遠くまで見渡せるなだらかな坂道ではあるが、
明らかに奥地へと入っている。
身ぐるみをはがされるどころか、
最悪の場合死ぬかもしれない。
さっきのスープに睡眠薬でも盛られたか?でも、
そんな危険はこの旅でももう何度も感じたことだ。
それに、このおじいちゃんせこいがどうも性悪とは思えない。
山道を20分ほど走っただろうか。
車は道を右に反れて、でこぼこの原っぱに止まった。